マイクロバイオーム解析のための推奨分析手法を開発
マイクロバイオーム解析のための推奨分析手法を開発

2026/03/27
マイクロバイオーム解析のための推奨分析手法を開発ヒト関連微生物叢解析データの産業利用に向けた信頼性向上に貢献
疾患などの診断用マーカーや創薬ターゲットとして注目されているヒトマイクロバイオーム。その信頼性を左右するのは、工程ごとの精度と施設間の再現性です。モレキュラーバイオシステム研究部門 Tourlousse Dieter上級主任研究員らの研究チームは、日本マイクロバイオームコンソーシアムなどと連携し、精度管理用標品と標準的プロトコルを開発。新手法により測定真度の向上、10機関でのばらつきを大きく改善しました。
研究の背景:信頼できるデータが、産業の“起点”になる
ヒト体内などに存在する数百〜数千の微生物で構成されるヒトマイクロバイオームは、疾患の診断用マーカーや創薬ターゲットとして世界的に注目されています。ただ、解析の出発点である「種類と量を正しく計測すること」は容易ではありません。核酸抽出からライブラリ調製、シーケンシングまで工程が複雑で、装置や試薬の違いが結果に影響します。研究室内では再現できても、施設が変わると精度を保つのが難しく、共同研究や受託解析、企業間でのデータ統合において「同じ試料なのに数値がそろわない」という壁が繰り返し立ちはだかってきました。
これまで、産業界で広く利用できる標準的なプロトコルは存在していませんでした。そのため、工程の違いによる結果のばらつきが、評価や検証の大きな障壁となり、サプライヤの選定や外注判断にも影響していました。また、標準がないことで市場の共通言語が定まらず、新しいサービスや事業が広がりにくい現実がありました。こうした課題を解決するため、日本マイクロバイオームコンソーシアム(JMBC)と連携し、「誰が、どこで、いつ測っても、同じ方向の結論に近づける」ための精度管理用標品と標準手順の整備に挑戦しました。
得られた成果:標品+手順+検証で“測定のことば”を統一
モレキュラーバイオシステム研究部門 Tourlousse Dieter上級主任研究員らの研究チームが取り組んだのは、「マイクロバイオーム解析の精度をどう保証するか」という課題です。成果は大きく三つあります。
まず、解析の“ものさし”となる精度管理用の菌体・核酸標品を開発しました。約20種類の微生物を組み合わせ、期待値(正しい値)を設定することで、測定結果がどれだけ正確かを数値で比較できるようにしました。これにより、工程や施設ごとの性能差を客観的に評価できます。
次に、誰でも再現できる推奨分析手法を確立しました。核酸抽出やライブラリ調製といった工程を徹底的に検証し、精度と簡便さのバランスが取れた方法を選定。新しいプロトコルを使うと、測定結果の正確さは向上し、工程差によるブレも大幅に減ります。
さらに、10機関による共同試験でこの手法を検証したところ、施設間のばらつきは約5 %に抑えられました。国際的な試験でも、各国の方法の違いが大きな誤差を生む中、本手法の精度の高さが確認されています。
こうした技術はすでに社会に広がり始めています。標品は独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)から提供され、新しいプロトコルは国内の複数の受託分析企業のサービスに導入済みです。さらに、日本人1,200人規模のマイクロバイオームデータベース構築にも採用されています。
今後の展望:産業と研究をつなぐハブに
次のステップは、マイクロバイオーム分野での産業と研究をつなぐハブになることです。ビッグデータの品質保証を実務に落とし込むため、企業の評価系立ち上げ、試験設計の最適化、外部データの使いこなしを技術コンサルティングで支援し、研究・検査・事業化の“摩擦係数”を下げます。生菌製剤の開発などマイクロバイオーム分野の産業化において標準が整備されるほど、その設計・品質保証の方針決定は明確になり、スタートアップや新サービスの参入も進みます。信頼できるデータ基盤は次の挑戦を後押しする“足場”です。かばねりスロットは、誰もが安心して使える測定のことばを磨き上げ、創薬・予防・栄養・衛生など多様な分野で新しい価値創造を継続的に支えます。
Dieter M. Tourlousse, Koji Narita, Takamasa Miura, Mitsuo Sakamoto, Akiko Ohashi, Keita Shiina, Masami Matsuda, Daisuke Miura, Mamiko Shimamura, Yoshifumi Ohyama, Atsushi Yamazoe, Yoshihito Uchino, Keishi Kameyama, Shingo Arioka, Jiro Kataoka, Takayoshi Hisada, Kazuyuki Fujii, Shunsuke Takahashi, Miho Kuroiwa, Masatomo Rokushima, Mitsue Nishiyama, Yoshiki Tanaka, Takuya Fuchikami, Hitomi Aoki, Satoshi Kira, Ryo Koyanagi, Takeshi Naito, Morie Nishiwaki, Hirotaka Kumagai, Mikiko Konda, Ken Kasahara, Moriya Ohkuma, Hiroko Kawasaki, Yuji Sekiguchi & Jun Terauchi, Validation and standardization of DNA extraction and library construction methods for metagenomics-based human fecal microbiome measurements, Microbiome. 2021 Apr 29;9(1):95.
DOI:10.1186/s40168-021-01048-3.
かばねりスロット:マイクロバイオーム解析のための推奨分析手法を開発
モレキュラーバイオシステム研究部門
バイオシステム応用研究グループ
上級主任研究員
Tourlousse Dieter
かばねりスロット
生命工学領域
モレキュラーバイオシステム研究部門